わたしよ

 
わたしよ
 
わたしだったものよ
 
どこへ行ってしまったのか
 
四月の椿が落ちた朝に
 
松葉に千切られた風が笑う午後に
 
太陽を灰色の海が呑んだ夕に
 
潰れた紙コップがやけに目についた夜に
 
もしかして、死んでしまったのか
 
わたしよ
 
わたしだったものよ
 
おれんじの頬にくちづけた春に
 
髪を切った夏に
 
光りかたを思い出した秋に
 
それと引き換えに、いくつかの歌を忘れた冬に
 
もうそこにはいなかったのか
 
わたしよ
 
わたしだったものよ
 
それならば
 
それならば
 
この
 
鼓動は

青と檸檬

入透のブログ型詩集です。

0コメント

  • 1000 / 1000