Sea bottle
くたびれたスニーカーを引きずりながら
ようやく
地球の果ての砂を踏む
幾重にも幾重にも幾重にも
波
覗き見た海鳥が騒ぎ立てる
新月の度、安いウイスキーの空き瓶に詰めた願い事
思い出さないようにと固く栓をしていたのに
昨日、とうとう溢れてしまった
空の天辺が宇宙と交わって、青い
風鳴りに何かを突き立てるように
心臓によく似た重さのそれを、振りかぶる
「 」
…ああ
そうか
企みは叶わなかった
右手はいつのまにか目の前にあった
瓶の栓を、開ける
しゃがみこんで、爪先に追いすがる白い波の縁に、茶色く変色した瓶の口をあてがう
古い期待の成れの果てが、ガラスの檻からするすると逃げる
夜に擦り切れた嗚咽が
鈍い痛みが
愛されたがった誰かが
歓声が
歓声が
歓声が
碧に散らばって、波間に消えた
ふたたび空っぽになった瓶には
代わりに海が流れこんだ
忘れないように、ふわり、栓をして
太陽に翳してほほえむと
赤い魚が瓶の中をくるりと回った
心臓は、あおく澄んだ音をたて、
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