こひ

 
あの日
ほそい ねむの木の下で交はした
うすいうすい玻璃のわれるやうな
くちづけに解かされて
わたしののどの奧の奧のはうに
流しこまれた 鈍いいろのそれが
たぶん おそらく "こひ" といふやつが
春の子馬のやうに
いつとなく わたしの中を駈けまはるので
わたしは
あなたを忘れてしまふことが
つひに できずに いるのです

青と檸檬

入透のブログ型詩集です。

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