或る国

 
 
その国では
 
紙の上にパンが湧き、
 
傘をさせば檸檬の味がする水が降ります
 
獣はみな草を食み、殺して肉を喰らうものはいません
 
家はいつでも百種類の花で飾られています
 
人びとは空飛ぶ靴と
 
掌に乗るほど小さい太陽をひとりに一つずつ持っていて
 
賢く、さまざまな魔法を知っています
 
子供はみなまるく美しく肥え、
 
大人はみな愛し、慈しみ合っています
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その国のどこかに
 
 
 
 
 
 
灰色の大地に蹲って泣き咽ぶ子供がひとりだけいることは、
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
誰も知りません
 




青と檸檬

入透のブログ型詩集です。

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