liquid

酒精に痺れた躰が、すこしずつ動かなくなっていくのが好きなんです

膿んだ私がようやく死んでいくような気がして

甘い檸檬の香りがする夜を、火照る舌先でかき混ぜて

街明かりに、有りもしない(しあわせな)過去を想う

誰からも忘れられたあなたが、微笑みながら崩れて行くのに

肺の底を満たす薄紅に、名前をつけるわけにはいきませんでした

褪せた海の絵画を引っ掻いた雨音

輪郭を霞ませるのは、記憶だったのでしょうか

梟が脳の片隅で鳴いて

曇ったままの私の視界に、日暮れを報せる

うすく嗚咽を含んだ鐘の音は

今も未だ、あの家に帰りたがって

揺れて

白髪の下の少女の貌が

あまりにも

夏の終わりに朽ちた蝶に似ていて


私は誰に会いたかったのでしょうか

私は誰を愛したかったのでしょうか


膿んだ私の死体は

澄んだあなたの水になって


いつか


青と檸檬

入透のブログ型詩集です。

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