春に

おれを置いて動いていく世界で


卵は如何にも黄色く
鼻腔を胎内記憶で満たす

病んだ空は斑ら
郭公は兎の仔の毛を毟る

夜はいよいよ青褪めて
雪原に臓腑をばら撒く

老女の死体に蟻が群がる
人工関節には目もくれず

人は
人にしかなり得ぬ
人にしか
なり得ぬのだ

おれを置いて動いていく世界で


青と檸檬

入透のブログ型詩集です。

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