瘢痕

胎の底には花が咲いていた、と、思う

しろい壁が打擲の音に染まり
陶器は恟々と取り澄ましている

顔はない
顔はない

汚れた膝の間の世界だけを受け入れて
五指は宙に浮く
臓器が圧縮されて便器に吐き出される
奥歯に溜まったトマトソースを舐める

顔はない
顔はない

犬が
犬が吠える
脳の奥で五感が白熱する
「しあわせになるの!しあわせになるのよ、わたし!」
歓声は全ての昨日を無視した
膿み腐った明日が庭に落ちた


芽は、一斉にこちらを向いて


顔は

顔は

顔は

顔は




犬を跳ねた車が
走り去った

青と檸檬

入透のブログ型詩集です。

0コメント

  • 1000 / 1000